会社を設立する際には、資本金をいくらにするのかを決めなくてはなりません。
資本金とは、会社として事業を始めていくにあたって、その元手となる資金のことをいいます。
会社法が施行されてからは、最低資本金規制がなくなり、極端にいえば資本金1円からでも会社を設立することができるようになりました。
最低資本金規制とは、株式会社であれば1,000万円以上、有限会社であれば300万円以上の資本金が必要でした(例外規定あり)。
会社法施行にともない、株式会社であれば資本金1円から設立することができ、有限会社は新しく設立することができなくなりました。
以前であれば、株式会社は資本金1,000万円以上が前提でしたから、株式会社の社会的信用は大きかったのですが、今となっては株式会社というだけでは信用されづらくなりました。逆に有限会社であれば最低300万円以上の資本金があるということでその価値が見直されているぐらいです。
では実際に株式会社を設立するにあたって、資本金1円で設立してしまってもよいでしょうか。
その会社の設立目的によって賛否はありますが、実際に事業を行うために設立するのであれば現実的ではありません。
社会的信用も得にくいでしょうし、そもそも会社を設立するための費用や事業を始めるにあたって事務所を借りる際の保証金や設備等の購入資金、事業が軌道に乗るまでの運転資金などは必要となるわけですから、資本金(元手)1円というのは難しいでしょう。
なお、資本金を1円として設立し、必要な資金については会社代表者等から借りるといった方法も考えられますが、決算書の観点からアンバランスですし少しでも赤字が出たら債務超過(資本が欠損した状態)になってしまうので想定していません。
以下でも創業にあたり必要な資金のうち自己資金を資本金とすることを前提に話を進めてみます。
では資本金はいくらがよいでしょうか。
それを考えるうえで大切になってくるのは、会社を設立する前に作成する事業計画です。
①会社を設立するための費用や設立準備のための費用にどれくらいかかるのか
②事業を始めるにあたって事務所、店舗の保証金や設備、備品にどれくらいかかるのか
③従業員やアルバイトなどの人件費にどれくらいかかるのか
④広告費や事務所、店舗の家賃、通信費、交通費など、毎月どれくらいかかるのか
⑤商品の仕入れにどれくらいかかるのか
⑥売上見込みをシミュレーションしたうえで、その売上が入金されるまでにどれくらいの期間がかかるのか
といったことを作成した事業計画から見込みます。
初期費用(①~②)、運転資金(③~⑤)および売上入金時期の見込み(⑥)からスタート時点で最低限用意しなくてはいけない資金が見えてきます。
最初から売上が多く見込まれ、入金も早い段階で見込めるのであれば、運転資金については3か月分ぐらいでよいかもしれませんが、通常は6か月分ぐらいは用意したいところです。
必要な資金をすべて自己資金で用意出来ない場合には、日本政策金融公庫などからの創業融資を受けるという手段もあります。
この場合には、見積もった必要資金から創業融資による借入額を差し引いた金額を資本金とすることになります。
なお、創業融資では返済のスタートを6か月間据え置きとできますので、その間に返済原資となる売上をたてて入金されるように動くなど、資金計画を見込むことができます。
では、会社法施行後に起業にともない株式会社を設立した事業者が具体的に資本金をいくらにしているかと言いますと、100万円~500万円が比較的多いように思います。
次に、資本金の決め方を税金面から見てみましょう。
まず、資本金をいくらにするかによって設立後2年間の消費税負担が違ってきます。
具体的には、資本金の額が第1期および第2期の開始時点において1,000万円未満であった場合には、その事業年度については消費税が免除されます(ただし、第2期については、第1期開始の日から6か月間の課税売上高または給与の額が1,000万円超であった場合には免除を受けることができませんのでご注意ください)。
なお、1,000万円〝未満”ですから、1,000万円は免除にはなりません。また対象期の開始時点での判定となりますので、第2期の途中で増資して1,000万円以上にしたとしても、第2期は免除対象となります。
また、第1期、第2期において設備投資額が大きく、売上について預かった消費税よりも設備の購入等について支払った消費税の方が多かったためその差額の還付を受けることができる場合には、免除の対象であったとしても還付を受けるための手続きを選択することもできます。
続いて、法人住民税の均等割の負担が違ってきます。
これは黒字だろうが赤字だろうが関係なく毎年納付する必要がある税金です。
たとえば、資本金が1,000万円以下で従業員数が50人以下の場合には7万円、資本金が1,000万円超~1億円以下で従業員数が50人以下の場合には18万円といったように、資本金等の額(資本準備金などの資本剰余金がある場合にはその金額も含んだ金額)の大小で税額が変わってきます。
以上、運転資金面と税金面から資本金をいくらにしたらよいかを見てきました。
これらの考慮した場合には、少なくとも第2期の開始時点までは1,000万円未満、それ以降でも1,000万円以下にしておいた方がよさそうですね。
ただし、対外的な部分、たとえば社会的信用や同業他社との比較など、商売を行う上である程度の資本金が必要である場合には、それをしっかりと考慮し商売がよりスムーズにいくように金額を決めるべきなのは言うまでもありません。
なお、上記では創業にあたり必要となる資金のうちの自己資金について資本金とすることを前提にお話ししてきましたが、出資については金銭以外、たとえばパソコンや自動車、個人事業からの法人成りであれば在庫として残っている商品、事業で使っていた機械などを充てることもできます。これを現物出資といいます。自己資金があまりないけれども、商売をするにあたり一定額以上の資本金が必要な場合などには有効な手段といえます。
ただし、現物出資ではその出資に充てる財産の評価額がとても重要になりますので、その評価にあたっては税理士等の専門家に相談してみてください。
以上のように検討するべき側面は多々ありますが、これから商売を行うにあたって何を最優先にするべきかをしっかりと考えたうえで資本金の額を決めていただきたいと思います。
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