個人で事業をされている方は、その年の1年間の所得(収入-必要経費等)の合計額を計算し所得税の確定申告を翌年の2月16日から3月15日までに行いますが、その際の申告には「青色申告」と「白色申告」という2種類の方法があります。納税者はどちらの申告を行うか自由に決めることができます。
青色申告とは、不動産所得、事業所得、山林所得について適用できる申告なのですが、複式簿記または単式簿記によって帳簿の作成をし、一定の書類の保存をすることを条件に、さまざまな特典が受けられる申告です。
白色申告とは、青色申告の特典は受けられないけれども、その代わりにしっかりと帳簿をつけなくてもよいですよ という申告です。
※ただし、前々年分あるいは前年分の所得の金額が300万円を超える白色申告者については帳簿の作成が必要です。 また、平成26年1月からは不動産所得、事業所得、山林所得を生ずべき業務を行う全ての方について帳簿の作成と保存が必要となります。
青色申告、白色申告どちらを選択するかについては、まず青色申告の特典が自分にとってメリットがあるかどうかを考えてみるとよいと思います。
青色申告による特典は、かなり多くあるのですが、主なところでは次の特典が挙げられます。
◆青色申告特別控除
これは所得を計算する際、その所得から65万円、または10万円を控除できる制度です。
65万円の控除と10万円の控除の違いは、帳簿のつけ方にあります。
正規の簿記の原則である複式簿記による帳簿をつけている方については65万円の控除が、簡易的な帳簿である単式簿記による帳簿をつけている方は10万円の控除が選択できます。
ただし、家賃収入などの不動産収入を事業としている方については「5棟10室基準」というものがあり、貸付を行っている不動産が、建物の場合には5棟、マンションであれば10室以上ある場合に、上記の複式簿記による帳簿をつけていれば65万円の控除が使えます。
この5棟10室の基準を満たさない場合には10万円の控除となります。
なお、駐車場の貸付の場合には、車5台分でマンション1室分とみなされますので、65万円の控除を使うためには50台分以上の駐車場を貸している必要があるため、不動産貸付では65万円の控除を適用するにはかなりハードルが高いと言えます。
また、65万円の控除を受けるためには確定申告書を申告期限内に提出する必要がありますのでご注意ください(提出期限後の場合には10万円の控除となります)。
◆青色事業専従者給与の必要経費算入
個人事業では、家族に仕事を手伝ってもらうこともあると思います。
その場合、家族に対して給料や賞与、アルバイト料などの支払いをされるかと思いますが、事業主と生計を一にしている配偶者や15歳以上の親族で、その事業に専ら従事している人に支払う給与については、青色申告であれば適正金額についてすべて必要経費として認められます。
なお、白色申告の場合には、配偶者に対して年86万円、配偶者以外の15歳以上の親族に対しては年50万円までしか認められていません。
◆純損失の繰越控除
ある年の所得が赤字になってしまった場合に、その赤字額を翌年以降最長で3年にわたってそれぞれの年の所得から差し引くことができます。
たとえば、今年150万円の赤字が出た場合、翌年の所得からその赤字額を差し引くことができ、翌年の所得よりも赤字額の方が大きかった場合には「赤字額-翌年の所得」について、さらにその翌年、翌々年と、赤字発生年から3年間繰り越して差し引くことができます。
◆純損失の繰り戻し還付
昨年は黒字であったけれども、今年赤字となったという場合に、今年の赤字額を昨年の黒字額
から差し引いて、差し引くことによって昨年納め過ぎとなる税金の還付を受けることができます。
ただし、この制度を利用した場合、処理内容の確認のために税務調査が入ることもありますのでご注意ください。
◆少額減価償却資産の特例
パソコンやコピー機などで10万円以上の備品については固定資産として複数年にわたって経費(減価償却費)計上するのが原則ですが、年間合計金額が300万円までの10万円以上30万円未満の備品については購入した年に全額必要経費とすることができます。
◆貸倒引当金繰入額の必要経費算入
年末時点でまだ回収できていない売掛金や貸付金などの金銭債権について、その一部をその年の必要経費にすることができます。
◆推計課税の不適用
白色申告の場合には、税務調査に入った場合に事業規模などから推計して税金の計算をされてしまう可能性がありますが、青色申告の場合にはそのような推計による課税を受けることはありません。
上記に以外にも青色申告には特典がいくつもあります。
帳簿をつけるのは大変な部分もありますが、今は会計ソフトが充実しパソコンを使えば比較的簡単に帳簿をつけることができます。
事業をされている方でまだ青色申告をされていない方は、上記の特典の利用価値を一度ご検討いただき、その利用価値ありと判断された場合には是非青色申告にチャレンジしてみてください。
なお、青色申告の適用を受けるためには、その適用を受けようとする年の3月15日までに申請書を納税地の所轄税務署に提出することが必要です。
ただし、新規開業の場合でその年の1月16日以後に新規に業務を開始した場合には、その業務を開始した日から2月以内が提出期限となります。
ご不明な点がございましたら、お近くの税理士等へお問合せください。
コメントをお書きください