相続や贈与についてお悩みの方はお気軽にご相談ください。
改正前の相続税法では、相続税の申告の対象となっている方は、全体の4%に過ぎませんでしたが、今年から適用となった改正後の相続税法ではその数が全体の6%ほどに増えると言われています。都心部ではその割合はもっと高くなるはずです。
改正後の相続税法では、平成27年1月1日以後の相続開始分より、相続財産から控除することができる基礎控除額が今までの6割に減額されるとともに、相続税率もアップされます。
基礎控除額が6割になるというのはかなり大きな変更点です。
たとえば、現在の相続税法では、相続人が配偶者と子2人であった場合、8,000万円(5,000万円+1,000万円×相続人の数:3人)が基礎控除額ですので、8,000万円以下の相続財産であれば相続税が課税されることはありません。
しかし、この基礎控除額が改正後には8,000万円×0.6=4,800万円となりますから、今までは課税の対象でなかった多くの方々が今後課税の対象となってくることが想定されます。都心部に戸建にお住まいの方で対象となる方は多くなるでしょう。
そこで、必要となってくるのは、現状においてご自身の財産がどのくらいあって、どれくらいの相続税が課税される可能性があるのかを把握すること(相続税シミュレーション)、そして現状からどのような相続対策が必要なのかどうかを検討してみることです。
では相続対策として、具体的にはどのようなものが考えられるでしょうか。
【相続対策】
1.節税対策
相続対策としてまず考えることは、相続税の負担をできる限り少なくすること(節税)です。
たとえば下記のような節税対策が考えられます。
(1)生前贈与を行う
相続税の負担をできる限り少なくする=相続財産を減らすことですから、生前にお持ちの財産の贈与を実行していくことは節税対策の基本です。
なお、生前贈与を実行する際には、その贈与にともなう贈与税の負担を考慮して行う必要があります。
また贈与税には110万円という非課税枠がありますが、この非課税枠の範囲内で毎年贈与を行うことによる財産移転だけではなく、110万円の非課税とは別に設けられている特例制度を検討することも大切です。
たとえば、「贈与税の配偶者控除」、「住宅取得資金の贈与の特例」などの特例制度があります。
なお、たとえ贈与税を支払ったとしても、相続税の負担税率と比較して低い税率であれば贈与税を支払ってでも財産の移転を行っていくということも検討しましょう。
(2)相続財産の評価額を下げる
相続税は、相続開始時点での財産に対して課税されるものです。
そしてその財産の評価は原則時価で評価することとされていますが、不動産の評価については一定のルールに従って計算することで実際の時価よりも低い評価額となります。たとえば、建物であれば時価の60%~70%、土地であれば時価の70%~80%と言われています。それが財産を金融資産ではなく不動産で持つことが節税になるといわれているゆえんです。
さらにそれが貸付用の建物、土地であればさらに評価が下がったり、事業用や居住用の土地には「小規模宅地等の特例」という大きく評価を下げることができる特例の適用もあります。
(3)債務控除をうまく利用する
相続税は、相続開始時点での財産に対して課税されるものですが、その財産はプラスの財産からマイナスの財産を差し引いて計算します。
マイナスの財産とは、借入金等の債務のことを指します。
そこでマイナスの財産を作るという意図から、銀行借入をし保有する土地の上にアパートを建てるということも以前から相続対策として行われてきているものです。
しかし、この債務控除を利用する場合には、注意しなくてはならないことがあります。
それは、借入金自体はその後に返済が必要なものであるということです。
たとえマイナスの財産を増やし、債務控除によって相続税を少なくできても、借入金の返済で苦労するようでは意味がありません。
そこで、もしこの節税対策を実行する場合には、事前にしっかりと返済計画を立てるなどの準備が必要です。
2.納税資金対策
1.での節税対策を行うことで相続税がゼロとなればよいですが、一定規模以上の財産がある場合には、ゼロにすることはなかなか難しいです。
そこで節税対策を実行しながらも、合わせて想定される相続税の納税資金の準備をしていくことも必要です。
納税資金がなく相続を迎えてしまった場合には、先祖代々から所有する大切な不動産などの財産を売却して納税資金を作る等の手立てが必要となってしまうことも考えれられます。
ですから、できる限りこのような処分をしなくても相続税を納税することができるように事前に可能な限り納税資金の準備をしておきたいものです。
なお、生命保険を利用した納税資金準備も検討できますので、お気軽にご相談ください。
3.相続トラブル回避対策
現在の相続に関する法律では、法定相続分による均分相続が定めれており、たとえば兄弟姉妹では、同じ相続分を取得する権利が認められています。
そのため、お互いの権利を主張することでの相続争いはかなり多く、財産を残す側にとっても心配の種となっています。
そこで、実際の相続を想定し、相続後に相続人間でのトラブルを回避してスムーズな遺産分割ができる様、事前に必要な対策を打っておくこともとても大切な相続対策になります。
【実際に相続が発生したら】
税金関係の手続きでは、被相続人の相続発生年分の所得税の確定申告(準確定申告と呼んでいます)と相続税の申告があります。
どちらも提出期限があり、準確定申告が相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内、相続税の申告が相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内です。
(なお、相続に関係する各種のお手続きに関しましては、お役立ち情報に一覧表を載せてありますのでご活用ください)
相続税の申告は「10ヶ月以内」と比較的余裕があるように思われますが、いざ相続が発生しますとすぐに相続税の申告に関する手続きを進められるわけではありません。
ご葬儀、初七日法要、四十九日の法要などと続き、ご遺族が相続税についてお考えになるのは数ヶ月経ってからからだと思います。
そして、そこから被相続人にどのような財産があるかの財産調査およびその財産の評価額の計算、誰がどの財産を取得するかを話し合う遺産分割協議、そして協議に基づく遺産分割協議書の作成、相続税の申告書の作成、納税準備・・・と続き、やらなくてはならないことは盛りだくさんです。
また、相続人が被相続人の財産を取得するのか、取得せずに放棄するのかの判断は相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に行う必要がありますから、放棄する可能性がある場合には、この「3ヶ月」という期限も意識したうえで上記手続きを進めていく必要があります。
相続税の申告は、ほとんどの方々にとって一生に一度、多い人でも二度ぐらいでしょう。
そして、相続税の申告は、被相続人の財産債務の精算という意味合いもありますが、財産債務を取得する相続人間のその後の人生にも大きく影響を与えるものでもあります。
ですから、可能であれば事前にしっかりと相続税のシミュレーションや相続対策を検討してみるとともに、相続発生後の遺産分割、相続税の申告においても後悔することが無いように生前にご家族でよく話し合っていただくとともに、税理士等の専門家をしっかりとご活用いただければと思います。
なお、相続発生後の取得資産の名義変更登記等についても、必要に応じて提携する司法書士をご紹介させていただきますのでご安心ください。